壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
結局土佐藩の藩士を5人も逃がしてしまったということが大きな問題となり、翌日浅野薫の切腹が近藤先生の口から告げられた。

今回の三条制札事件は包囲網が完成されていれば敵を逃すことはなかったとされ、臆病者がいたせいでこのような結果になってしまったという理由だった。

浅野に命じられた切腹はいつもの切腹とはいつもと違っていた。

切腹には必要不可欠な介錯役が付けられなかったのだ。

私はそのことを知ったとき、不本意ながら浅野に同情してしまった。

切腹は介錯役が首を斬るからこそ苦しまずに逝けるのに、それがいないということは自らの意志で腹を強く刺さないと死ねないのだ。

強く刺すということはその分痛みがあるということで、それでも死ねない場合は刺した状態でえぐるようにしなければならなかった。

近藤先生がこのようにしたということは相当怒っているということであり、死ぬ間際まで許さないという表れでもあった。
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