壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
「斎藤先生、ひとつだけお願いがあります。

私に斎藤先生が近くにいたという証をください…」

私は意を決し斎藤先生にそう告げると困ったような表情を浮かべながらもそれを了承した。

「できれば愛望が寝ているうちに別れを告げずに行こうと思ったんだけどな…

俺は愛望を愛しているのに、いつも傷つけることしかできない…」

そういうと斎藤先生は私の縛っている髪紐をほどき、私の髪の毛を手でやさしく包み込むとおろしたことによって隠れたうなじを再びあらわにしてそこに口づけをした。

斎藤先生の口づけはすべてを包み込むような優しい口づけで私の心をゆっくりと支配していった。

「本当にいいのか?」

「はい…
斎藤先生とならばかまいません…」

この先、何が起こるのかはわかっていた。

このまま続けていいのかという斎藤先生の問いかけに対し、私は頷きながら答えたのだった。

その後は斎藤先生にすべてをゆだね、私は斎藤先生との別れを惜しんだ。

「斎藤先生に会えてよかった…」

私は斎藤先生に身をゆだねながら今の気持ちを言葉にした。

「俺もだ。
斎藤先生じゃなくて一って呼んでほしい。

今夜だけは愛望と恋人になりたい…」

「一さん、お慕い申しております…」

この日、私はすべてを一さんに任せたのだった。

それは今まで経験したことのないようなもので、私はその中に埋もれていった。
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