壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
「忘れる必要なんてないですよ。」

うつむいた私に沖田先生がかけた言葉に私は「えっ」と驚いた。

脱退した人は新選組にとって敵と同じであり、本来は切腹が命じられるはずなのに、沖田先生は斎藤先生のことを忘れなくていいと言ってくれるのだ。

「忘れる必要なんてない。

本当に大切な人ならどんなに離れていても、二度と会えないとしても心と心でつながっていると俺は思っています。

甘い考えだって言われるかもしれませんが、俺はこの信念を貫き通します。

これ、俺が山南先生の件で落ち込んでいた時に杉崎さんが言った言葉だよ。

俺はこの言葉で救われた。

大切な人をわざわざ忘れなくてもいいんだって思えたから、俺は今でも山南先生の後を追い続けている。

杉崎さんも、それでいいんじゃないかな?

他の人が聞いたら特に土方先生とかだと甘いっていうんだろうけど、俺の前では本音をさらけ出していいんだよ。」

私は心のどこかで、誰かが忘れる必要なんてないと言ってくれるのを待っていたのかもしれない。

今はまだちゃんと感情の整理をつけることはできないけれど、少なくとも私は沖田先生のこの言葉に救われたのだった。
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