壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
清水の甘味屋へ行くと沖田先生はお品書きのここからここまでという破格の注文をし、私たちの机の上は甘味が所狭しに並べられていた。

「食べないんですか?
ここの、甘くておいしいんですよ。

特にみたらし団子がおすすめなので杉崎さんも食べてみてください。」

この甘味の量にも驚いたのだが、それ以上に沖田先生の甘味を食べる速さに驚き、甘味が届いて5分も経っていないのに、空になったお皿がいくつかあることの方が驚きだった。

沖田先生は私にみたらし団子を勧めておきながらどんどんとみたらし団子を胃の中に収めていき、ついに残り1本になったところで私は負けじと手を伸ばした。

沖田先生の勧めるみたらし団子は確かにおいしかった。

お団子はとてももちもちしていて、みたらしはほんのり甘く鼻を抜けるほど香ばしく、沖田先生が次から次へ食べてしまう理由がわかった気がした。

「本当においしいですね、このみたらし団子。」

「そうでしょ?
他のも全部おいしいから食べてみてください!

お金の心配はいりませんから。」

私は他の甘味にも手を出し、舌鼓を打ちながらお金の心配をしなくていいのはなぜか沖田先生に問いかけた。

「土方先生がお金をくれたんですよ。

これで杉崎と一緒に甘いものでも食べてこいって。

だから今回だけはお代を気にしないで食べられますよ!」

私がふさぎ込んでいたのは案外多くの人に心配をかけてしまっていたらしく、鬼の副長と呼ばれている土方先生にまで心配をかけていたとは思わなかった。

それから私たちは小一時間ほど甘味を堪能し、お土産用にみたらし団子を20本包んでもらい、甘味屋を後にした。
< 63 / 271 >

この作品をシェア

pagetop