壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
屯所へ戻るまでの間、私と沖田先生はいろんな話をした。

「この先に三年坂っていうところがあるんだけど、そこで転んでしまうと3年以内に死んでしまうんだって。

もし、一君がこの話を聞いたらなんて言うと思う?」

忘れる必要なんてないから、私たちは普通に斎藤先生の言いそうなことを考えた。

「3年も生きられれば十分だっていいそうですよね、斎藤先生なら。」

「一君ならそういうかもね。
武士なら、常に死と隣り合わせの人生を生きてるのだからって。

でも、俺は一君ってそう簡単に死なないと思うんだよね。
なんだかんだ天寿を全うしそうな感じ。」

「斎藤先生、前に私に言ったことがあるんですよ。

俺を殺してくれる奴がいないから俺は今も生きているって。

死を怖がらないから、あんなに強いんだって思うけど、俺は死ぬの怖いなぁ…」

私たちは斎藤先生のことをこれでもかというほど語りあった。

「私の故郷に石割桜っていうのがあるんですけど、それって斎藤先生みたいなんですよね。

南部は冬が厳しいんですけど、桜はそんな寒さに耐えるからこそきれいな花を咲かせ、散っていくって。

石割桜っていうのは名前の通り、本当に石を割って生えてるんですよ。

桜の生命力ってすごいですよね。」

石割桜というものがあるというのを聞いたことがあるのを思い出した私はまるで見てきたかのように石割桜の話を沖田先生にした。

「石を割って咲く桜かぁ。

いつか見てみたいなぁ。」

沖田先生は石割桜のことを想像しているようで見てみたいという言葉が自然と沖田先生の口からこぼれた。

「いつか三人で見に行きたいですね。
斎藤先生も一緒に…」

「あぁ、いつか見に行けたらいいなぁ。」

石割桜を3人で見に行くことは絶対に叶わないということがわかっているけれど私たちはそんな夢を見ながら、屯所へ帰っていった。
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