壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
「これから御陵衛士の動向を探る。

各々来ているだんだら羽織を脱ぎ、裏返しにして小さくたたんでくれ。

さりげなく御陵衛士の屯所前を何人かに分けて通りつつ、中の様子を確認する。

どんな動きをしているか些細なことでも構わない。
何か気がついてことがあればそれを後で土方先生に報告する。」

御陵衛士の屯所の近くまで来ると、私は三番隊の隊士を二人ずつに分け、怪しまれないように屯所の前を歩かせた。

そして最後に私はひとりで御陵衛士の屯所前をゆっくり歩いて通過した。

私が見た光景は斎藤先生が楽しそうに藤堂先生らと談笑している姿だった。

斎藤先生はもう、新選組には関係のない人なのだと痛いほど痛感した瞬間だった。

斎藤先生が楽しそうに談笑している姿を他の隊士も見たらしく、皆やるせない気持ちを一生懸命隠していた。

そのあとは誰も話すことはなく、私たちはだんだら羽織を着なおして屯所へと帰った。

どうやって帰ったのは覚えていなかったのだが、足はしっかりと動いていたらしく気がつくと屯所の門の前までたどり着いていたのだった。
< 70 / 271 >

この作品をシェア

pagetop