壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
季節はめぐり、斎藤先生がいなくなる時につぼみだった屯所の桜は散り、屯所を囲むように植えられているつつじの花が見ごろを迎えていた。

私はここに来たときから自主的に草木に水をあげており、今日も稽古の合間をぬってきれいに咲いているつつじたちに水をあげていた。

「こんなにきれいに咲きましたよって斎藤先生に報告したいなぁ…」

花がきれいに咲くといつも斎藤先生は私と一緒に縁側で花見をしていたため、ふとそんなことが口からこぼれる。

「今年からはずっとひとりで見るのかぁ…
でも、やっぱりさみしいから甘味を用意して沖田先生でも誘おうかなぁ…」

花見の計画をたてながら水やりを終え、桶と柄杓を片付けに行こうとしたとき、後ろから声をかけられた。

「お前の隣にいていいのは俺だけだ。

たとえ総司であっても絶対に譲らない。」

振り向かなくてもそれが誰の声なのかはわかる。

私は手に持っていた桶と柄杓をその場に落とすとゆっくりと後ろに振り向いた。
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