壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
「次に杉崎。

3ヵ月とはいえ組長をやった感想は何かあるか?」

なぜこんな大事なことを話す場に私が同席したのかこの言葉を聞いてやっとわかった。

私が組長を務めてどう感じたのか、斎藤先生が戻ってきた今となっては組長を斎藤先生に戻すことも可能だと暗に伝えているのだろう。

「俺は組長として皆を引っ張っていくことはできないなと痛感しています。

組長になってすぐに自分の目的を見失い、あの時土方先生と沖田先生が手を差し伸べてくれなかったら間違いなく俺は今この場に、新縁組にいなかったと思います。

それ以降も三番隊の皆が俺のことを支えてくれたから、何にもできない迷惑しかかけることのできなかった俺を受け入れてくれたからここまでやってこれたのだと感じています。

だから、叶うことならば三番隊は斎藤先生に率いてもらいたいです。

三番隊の皆のためにも、他の隊の方々のためにもやっぱり斎藤先生じゃないと駄目なんだと。

土方先生、お願いです。
私を組長格から降格させてください。

斎藤先生お願いします。
三番隊に戻ってきてください。
俺たちには斎藤先生が必要なんです。」

自分の思いを伝えたところで土方先生がそれを認めてくれるかはわからなかった。

もし認めてくれたとしても斎藤先生が承諾するかはわからなかった。

私は土方先生と斎藤先生がどんな判断を下そうともそれに従おうと心に決めていた。

誰もしゃべらない時間は体感的にかなり長く感じ、私はただ固唾をのんでその空気を受け入れていた。
< 77 / 271 >

この作品をシェア

pagetop