壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
私が大きな声を出したことにより、寝ていた他の隊士も何事かと起きてきたため、谷先生は前に進めば他の隊士に、後ろに戻れば私に捕まるような状況だった。

谷先生はしゃがみ込んだまま立ち上がることはなく、この騒ぎを聞きつけた他の調べ役の隊士によって捕縛され、牢へ連行されていった。

「杉崎、よくやった。」

谷先生がいなくなった後、私は斎藤先生とともに部屋へ戻り事の次第を斎藤先生に話した。

やっと報われたという思いとともに、大好きな斎藤先生に褒められ、私は今までの緊張が嘘のようにほどけていった。

「斎藤先生、私やりましたよ…」

緊張の糸が切れた私に一気に眠気が襲ってきた。

「あぁ、お前はすごいよ。
今は眠りなさい。

ずっと気を張り詰めていたのだから、身体をゆっくり休めろ。」

私の腰に差していた小太刀を抜き枕元へ置くと斎藤先生は私を布団へ寝かしつけた。

「愛望、お疲れ様。」

布団に寝かしつけられた私はすぐに眠りに落ちていき、枕元で斎藤先生が私にやさしい言葉をかけ、口づけをしたことは何も知らなかった。
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