エセ・ストラテジストは、奔走する
「……っ、あの、待って…」
「無理。」
私のパジャマのボタンに手をかけながら
それはそれは器用に、もう片方の長い指が体の輪郭全てを辿るように這う。
「かやと…、」
「うん。」
うん、じゃ無い……!
さっきまで私も彼と一緒にいた、2人で寝るには狭いシングルベッドはシーツの温かさを保ったままで。むしろ熱をどんどん取り込んでいる。
どうしよう、だって一応私は今、作戦を実行しようとしている最中で、すごい雑な作戦だけど、でもあの2人が考えてくれたし、というか理世に関しては、もはや面白がってるだけだけど、
と、取り止めのない思考が焦りと一緒になって子供みたいに駆け回る中で、茅人は全然動きを止めてくれない。
パジャマがベッドの下に落ちた、と理解すれば当然、私は下着姿になっていて。
キャミソールから覗く無抵抗な肩に彼の唇が触れた瞬間、びく、と体が反応してしまった。
「…いつもこうなる。」
「分かってるなら、しないで、」
「嫌。」
淡々とその事実を語って否定だけ告げる声色はやっぱり涼しくて、恥ずかしさが充満してしまうのに。
この人の狡いところは、短い言葉とは裏腹に目尻を下げて優しい眼差しを、急に向けてきたりするところだ。
その瞳に、私は勝てたことが無い。