エセ・ストラテジストは、奔走する
「あ、先にお母さんに連絡するね。」
「うん。」
2人とも準備を整えつつ、茅人に告げてスマホを取り出す。
ここから東京駅までそんなに遠くないし、朝早いから自由席でも問題なく乗れる筈。
時刻表アプリで、地元までの繋がりのいい経路を調べつつ母へと電話をしようとした瞬間、
__プルルルルル
スマホの画面が切り替わって、今まさにかけようとしていた人物からの着信が知らされた。
凄いタイミングだ、と驚きながらすぐにそれを耳に当てた。
「もしもしお母さん?」
"あ、千歳?
あのね、多分12時前にはそっちに着けると思うのよ。"
「……は?」
なんの脈略も無く報告された言葉が、理解出来ず聞き返すと「だから〜」と何故か呆れた声を出された。
「お昼ごろには東京に着く新幹線に乗るから。
あんた迎えに来てくれる?」
「………誰が着くの?」
「だから、私。」
____________は?
再び間抜けな返答をすると、「あんた理解遅いわねえ」なんてしみじみと感想を零している。
「ま、待って。
私と茅人が今日そっち帰るよって言ってたよね?」
「言ってた。でも私が行くことにしたのよ。」
「どういうこと!?」
「まあまあ、とりあえずもう新幹線来ちゃうから乗るわ。迎えに来て?
あ。私、東京のオシャレなランチ食べたい。」
「え!!ちょっと待って……!!!」
私の焦りも虚しく「じゃあね」と軽く述べた母は勝手に電話を切ったらしくスマホからはツーツーと通話の切れた音しか聞こえてこない。
唖然とする私の異変に気づいた茅人が「どうした?」と洗面所から顔を出した。
「……お母さん。」
「うん?」
「い、今からこっちに来るって、」
「………は?」
先程からの私と全く同じ一音を吐き出した彼は、珍しく目を丸くしていて、そのまま2人して言葉なく見つめ合ってしまった。