エセ・ストラテジストは、奔走する
待って、と譫言のように呟く私を無視して散々愛撫を繰り返した後、
「千歳、触るよ。」
予告されたらそれはそれで凄く羞恥が募ることも、この人はきっと分かっている気がする。
「…あ、っ…、」
何かを伝える前に、太腿を撫でた指がそのまま下着を器用にずらして確かな刺激を与えてくれば、従順に声なんか簡単に口から溢れていってしまう。
このままじゃ、本当に、作戦どころじゃない。
「茅人、あの、」
「……今日、変。」
「へ?」
「なんか上の空。」
「……、」
指を中途半端に止められて、そのことにも落ち着かないまま、鼻先の触れる距離で見つめた顔が、不満げに自分の瞳に映っていた。
だから私、さっきから待ってって言ってるのに。
乱れた呼吸のまま、なんとか言葉を紡ぐ。
「お、お味噌汁…」
「は?」
「お味噌汁、作ろうって思って、」
「……料理、下手なのに?」
また、言われた。
そんなに何回も言わなくても良いのに。
そもそも料理は美味しさじゃなくて真心だと伺っている。
「なんで味噌汁?」
「……に、日本人の朝食の定番だから…?」
「千歳、朝はいつもパン派だろ。」
「………、」
絶句に近く言葉を失った私に、キョトン、と珍しくあどけない顔をした彼を
可愛いとか、思っている場合じゃない。
___この人、もしかして、思ったよりも凄く鈍いのかもしれない。
作戦1「掴むは、胃袋」
《お味噌汁作ろうとしたら
「朝はパン派だろ」と言われました。》
《おいなんだその返しは。草生えるわ。》
《千歳ちゃん、ファイト!!》