エセ・ストラテジストは、奔走する
「千歳ちゃん達って、どうなってるの?」
「……どう、って…?」
美都は、ふき取りを終えた後、そのままカップを両手で口元に持って行きつつ、さらりと尋ねてきた。
「“そういう話“は、進んでるの?」
「………えっと。」
「うん、何も進んで無いのね。」
「……」
スコーンが有名な可愛らしいこのカフェは、インスタでも人気で。
美都が東京に来たら連れてきたいとずっと思っていた場所だ。
「付き合って何年だっけ?」
「えっと、もう6年目…?」
「……千歳ちゃん…」
「わ、分かってる、美都が言いたいことは分かってる。」
焦った声色で美都の言葉を遮ると,彼女は暫し私を見つめて、深くため息を吐き出した。
「2人が今の関係で納得してるなら、それで良いって思ってたけど。
でも、さっきの子達の会話で簡単に動揺するくらいには千歳ちゃんは、とっくに意識してるんでしょう?」
「……、」
さっきまで割と大きなボリュームで,自身の恋バナを語り合っていた女の子達はいつの間にか既にお店を出ていて、隣は空席になっていた。
ポツンとテーブルに置き去りにされた食器が、嫌に寂しく存在している。
「…千歳ちゃん、」
「___ごめん、お待たせ。」
じ、と黙りこくる私を美都が優しい声で再び呼んだ時、それに重なるように男の声が届いた。