エセ・ストラテジストは、奔走する
そこまでを言い逃げのように告げ切った私は、
財布と鍵、後はこの着なれたダサいパジャマを少しでも隠したいとロングコートだけを持って部屋を飛び出した。
作戦3「忍ばせるは、例の雑誌」
冬に向かう風を耐えるには、あまりに軽装すぎた。
気休めに肩をすくめて身体を縮こまらせて。
少しでも寒さから逃れるように歩いて、最寄り駅から電車を乗り継いでたどり着いた場所。
3年前の春、茅人と一緒に、この東京駅の丸の内駅舎を一緒に見たことを思い出す。
テレビでしか見たことのなかったレンガ造りのそれにはしゃぐ私の隣で、やっぱりいつも通り何も言わなかったけど、彼の眼差しが一等柔らかいように思えた。
…だけどあれも、私の錯覚だったのかもしれない。
思い出は優しすぎる。
例えばそれが愛しい人とのものなら、尚更だ。
自分勝手にその優しさを抱き締めて、
その続きをずっとずっと、大事に探したくなる。
東京は、毎日沢山の人が出入りするから、私が此処を出て消え去ったとしてもきっと悲しんでなんてくれない。
さっき購入したばかりの切符を握りしめて、
新幹線の改札を目指した。