エセ・ストラテジストは、奔走する
「…理世、久しぶり。」
「なんだお前、辛気臭い顔して。」
「元々こういう顔ですけど?」
「そうだっけ、彼氏とうまくいって無いのかと思ったわ。」
「ちょっと、理世。
来て早々、図星ついて千歳ちゃんの傷抉らないで。」
「ああ、悪い。」
「うううまくいってますけど!?」
私が語気を強くしてそう言うと、美都と理世はクスクスと息をぴったり合わせて笑う。
「……相変わらず仲がよろしいことで。」
「当たり前だろうが。」
「どういう威張り方なの?」
平然と肯定した男は、ジャケットを脱いでテーブルを一緒に囲うように座る。背も態度もでかいこの男は、可愛らしいこの店内には全然似合わない。
「仕事片付いた?」
「うん、余裕。
明日の式場の打ち合わせは俺も行くから。」
「良かった、お疲れ様。
……千歳ちゃん?どうしたの?」
「やっぱり、お似合いだなあと思って。」
美都も、理世も、東京からは遠い、
私たちの地元にある大学に通う同級生だった。
そもそも美都とは高校の時からずっと仲が良かったから同じ大学に行けることになって嬉しいね、なんて話はしていて。
理世は高校は別で、大学で知り合った男だ。
イケメンだと学部内で入学当時から騒がれてたけど
美都に事あるごとにアタックしていた。
もっといけすかない奴なのかなと思っていたのに。
私の親友にくびったけで、そのくせ相手にされてない男が、なんだか途中から放っておけなくなって、色々相談を受けているうちに、自然と仲良くなった。
だから、「付き合うことになった」と言われた時はすごく嬉しかったし、2人は美男美女カップルとしても有名だった。
就職を機に、理世は東京配属になって、美都は地元で就職して。
暫く遠距離恋愛になるって聞いて心配もしたけど、
きっちりと話し合いをしていた彼らは、美都が会社の異動願いを出せる今度の春、社会人4年目のタイミングで漸く、結婚する。