エセ・ストラテジストは、奔走する
まだ整理がちゃんと、できてない。
うまく伝えられないかもしれない。
でも、もうそれでも良い。
なんでも良い。
___千歳のこと、こうやって抱き締められるのは、これからも俺だけが良い。
「仕事がキツくてしんどくても、
千歳から“お疲れ“ってメッセージきてたら嬉しい。」
「…え…?」
「会える日には、ちょっと良い入浴剤でお風呂準備してくれてるのも愛しかった。」
「……、」
「寝顔も、いつも可愛い。」
「…茅人、」
「…ずっと、俺は千歳に支えられて生きてる。」
もうちょっと、スマートに格好良く言えないのか。
自分の言葉の下手さにやっぱり呆れたけど、
全部、何もかも嘘は1つも無い。
触れ合った今この瞬間から、絶えず思っている。
大事でたまらないこの温もりを
傍で感じられたら。
俺の気の利かない言葉もちゃんと頷いて
受け止めてくれる愛しさを実感できたら、
ただ、それだけで。
俺はきっと、生きていける。
「…茅人。私、就職決める時、茅人と離れたくなくて、我儘言って、たくさん、迷惑かけてることにもずっと気づかなかった馬鹿だけど。」
腕の中でそうぽつりと告げた千歳は、
どうやらお母さんから全てを聞いたらしい。
何言ってんの、馬鹿は俺だから。
そういう気持ちも含めて全部、
言葉にしようとしたら
「茅人のことが、好き。
本を探してるって、
私の前に現れてくれた時から、ずっと、大好き。」
千歳は、震える声で必死にそう言って、
俺の背中に回す手に力を込めた。
嗚呼、結局また、先に言わせてしまった。
"__あの、ちょっと良いですか。"
"はーい。"
突然現れた可愛い店員に、
最初から目を奪われたのは確実に俺の方だ。
「…千歳、あれ偶然だと思ってる?」
「え?」
「声かけたのは、"書籍部に入った可愛い女の子"が、誰にでも無防備に接客してるからだよ。」
「……」
「色んな男に本の場所聞かれてるから、これはまずいなって思って。」
「…し、知らないそんなの。」
「ちなみに、文藝春秋の連載は俺が千歳に話しかけた時の号で終わってたから。」
「え!?」
ぐだぐだで、本人以外にはもろバレしていた俺の作戦の種明かしを、漸く告げた。
全く気づいていなかったと、大きな愛らしい瞳を見開いて驚く鈍感な元・店員に思わず笑って、頬にキスを落とす。