それは、魔法みたいに
「僕らは信じているよ」
「両手合わせて拝むのやめてください」
私の話なんてどうせ聞く気などないのだろう。
こうなったら社長令息とか気にせずに部下としてこき使うしかない。
御上千香の前に立つと、眩しいくらいの笑顔を向けられる。
「加藤さん、久しぶり。本日からよろしくおねがいします!」
「う……」
あまりの輝きに目を細めて、額に手の甲を当ててしまう。
なんなんだ、この輝きは。背中からライトでも当てているの? そのくらい笑顔が眩しい。女顔負けの綺麗な顔の作りをしているのが憎らしくなってくる。
「……ええ、よろしくお願いします」
存分にこき使わせていただきます!!
心の中で高らかに宣言をして、営業スマイルを返す。どうか私の邪魔だけはしないでほしい。
御上千香のデスクは私の隣になった。仕事がしやすいように配慮してくれたらしいけれど、私としてはなんだか落ち着かない。というのも、視線が熱い。なんでそんなに見てくるのだろう。心配しなくても、仕事はちゃんと振るつもりだ。
「加藤さん、俺なにしたらいいかな。コーヒー淹れる?」
「はい?」
「コーヒーには、ミルクと砂糖入れる派?」
なに言ってんだこの人。いきなり配属されて、コーヒー? 今の時代コーヒーなんて自分で好きなときに淹れる。