チョコ4つと意趣返し ~12年目の恋物語 番外編(3)~
「あー、うー、その節は失礼しました。でも、陽菜からのチョコは嬉しくなかったですか?」
先輩が一瞬、言葉を失う。
「はいはい。嬉しいですよね。他の誰からもらっても、多分、先輩はうっとうしいなって思うんだろうけど、陽菜からのチョコなら義理でも嬉しいですよね」
思わず、ニヤニヤ笑ってそう言うと、先輩は複雑な顔をする。だけど、
「すべては否定しないよ。けど、寺本からのはうっとうしくないし、嬉しいと思ってる」
と、逆によそ行きの極上の笑顔で微笑みかけられて、私は頬が上気するのを感じた。
よそ行きだけど、よそ行きじゃない先輩。
こんな、人をからかうようなこと、多分、私以外にはしないもの。
「付き合い始めたばかりの彼女から、明らかに別の人からのチョコを渡される気持ち、分かる?」
「え?」
思わず先輩の顔を凝視した。
それって、少しくらいは私のこと……、って言うことですよね!?
続く言葉を待ちながら、胸が高鳴るのを感じた。
でも、先輩はニッコリ笑うだけで、それ以上は何も言ってくれなかった。
思わず、
「……ですよねー」
とぼやくと、先輩はまた楽し気に笑い出した。
(完)