チョコ4つと意趣返し ~12年目の恋物語 番外編(3)~
「陽菜はいくつ買うの?」

「ん? 九個かな」

「え、そんなに買うの!?」

「うん。パパとおじいちゃんとお兄ちゃん、それから、カナ」

 そこで一度言葉を切って、恥ずかしそうにはにかむ陽菜。色白な頬がポッと赤く色づいた。
 うんうん。幼なじみじゃなくなって最初のバレンタインだもんね。

「後、広瀬のおじさまと晃太くんと、運転手さん、えーっと、それから病院の先生」

 陽菜は指折り数えながら教えてくれる。

「しーちゃんは? 羽鳥先輩とお父さま?」

「うん。後、おじさんと従弟にも。近所に住んでるんだ」

 あれがいいんじゃないとか、こっちはどうかなとか、うちのお父さんはかなりの甘党なんだとか、叶太くんは甘いのがそんなに好きじゃないとか、そんな話をしながら、手に持った買い物かごに少しずつ選んだチョコを入れていく。

「ね、陽菜、羽鳥先輩の分は?」

「……え?」

 何を言われたのか分からないって顔の陽菜。

「あ、色々、お世話になったから?」

 だけど、私が何も言わなくても、陽菜は自分から答えを導き出す。

「そうそう」

 笑顔でそう答えるけど、やっぱり、陽菜、いかにも腑に落ちないって顔で小首を傾げた。

「……義理チョコ?」

「そうそう」

 私がまたもやニコリと笑うと、陽菜は少し迷ってから、お兄さんたちにって選んでたのと同じチョコを手に取った。

「しーちゃん、渡してくれる?」

「自分で持って行かないの?」

 そう聞くと、陽菜は少し迷ってから、

「……カナが嫌がる気がするから」

 と、ちょっと恥ずかしそうに教えてくれた。

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