望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。
「浮かない顔をしているね」
その言葉にはっと我に返り、パスタを食べようとする手が止まっていたことに気がついた。
優希くんとお洒落なイタリアンレストランのランチ中だというのに、私はいつにも増して気が重かった。
「すみません……優希くんが素敵なお店に連れてきてくれたのに」
「気にしないで。ある程度は想像がついていたから」
優希くんは苦笑をもらす様子に、尚更申し訳なさでいっぱいになる。
何故なら私は彼を利用しているも同然なのだから。
一度断っておきながら、郁也さんのことを考えると悲しくなって、つい優希くんを頼ってしまったのである。
「すみません……」
「何があったのか、俺に話せる?」
優希くんは私を刺激しないよう、優しい声で話しかけてくれる。
けれど私は躊躇ってしまう。
話してしまえば、心の奥底に閉じ込めている感情が溢れ出してしまいそうな気がするのだ。
「……本当はね、昨日の九条さんからの電話で期待していた自分がいたんだ」
「えっ……」
言葉に詰まらせていると、再び優希くんが口を開いた。
期待……とは、どういうことだろう。
私が反応に困っているのに対し、彼は穏やかな表情が崩れることはなかった。
けれど何処か切な気な表情にも見えてならない。
「きっと相手と何かがあったんだろうなって、ある程度の予想はついていたから、弱さに漬け込んで奪えはしなくても、また心変わりしてくれるかなって期待してた」
今の優希くんの表情と言葉が合っていない気がするのだけれど……弱さに漬け込むとか、そんなこと絶対にしなさそうな人なのに。