望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。
「俺、思ったより悪いこと考える人間なんだよ。だけど、いざ九条さんに会ってみると、無理だなと思ったよ」
一度優希くんは小さく笑い、私と目を合わせてきた。
「想像以上に九条さんの心は相手に持っていかれているようだね」
思わず目を見開く。
驚いた理由は、そのことを自覚していなかったからではない。
優希くんに指摘される程、顔や態度に出ていたことに驚いたのだ。
気づかないフリをして、感情に蓋をしていたつもりだった。
「もしかして隠せていると思ってた?」
「それは……あの、どうして」
わかったんですか?と最後まで尋ねることはできなかった。
もしバレバレだったとして、郁也さんにも伝わっていたらと思うと怖かった。
結婚式の後、ホテルのスイートルームで彼は言った。好かれるのは面倒だから、と。
「俺への態度が変わったのもそうだけど、九条さん、結婚して少し経った後から、俺がプレゼントしたピアスをつけなくなったよね。それまではアルバイトで被る毎につけてくれていたのに」
最初は郁也さんではない男の人の物をつけるのはどうかと思い、意図的に──気づけば当たり前になっていた。
それを優希くんもわかっていたようだ。
「あと結婚指輪もそうだね。最近は見る度につけている気がする」
確かにその通りだ。
いつしか大学の時も結婚指輪をつけている自分がいた。大学につけていくのはあれ程躊躇っていたというのに。