望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。


「バレバレ、だったんですね……相手にもバレていたらどうしよう」

「バレたらいけないの?」

「以前、好かれるのは面倒だからと言われました。それにこの結婚は政略的なモノで、私たちの間に愛はないです。相手には愛する女性が他にいるので」


 昨日のことを思い出して、事情を説明しているだけなのに、目頭が熱くなる。

 こんな所で泣いてはいけないと思うけれど、堪えきれるだろうかと不安だった。


「九条さん、本当はこういうこと言いたくないんだけど……多分、すごく大きな勘違いをしていると思うよ」

「えっ……?」

「前に一度、九条さんの相手と会った時に確信したよ。二人は惹かれ合っているって」


 何を根拠に……と思ったけれど、八つ当たりだと捉えられてしまいそうで、あえて何も聞かないことを選ぶ。


「一度話し合ってみることを俺は勧めるよ。ちなみに俺と会うことを相手は知っているの?」

「……はい。元々、相手と出掛ける予定で……」
「それで相手は何て言った?」

「……待っている、とだけ」


 けれどそれは良き夫婦をアピールするために過ぎないのだと自分に言い聞かせた。

 郁也さんにとって、私の価値は所詮その程度なのだと。


「尚更話し合わないと、一生すれ違ったままで終わるよ?九条さんはそれでいいの?」

「3年以内に離婚という条件なので……」
「強がらないで。たまには素直になっていいんだよ」


 そんなこと言われたら。
 優希くんに頼って、甘えてしまう。

 心の奥底に沈んでいる感情が溢れてしまう。


「私、私は──」

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