望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。
「昨日、香織さんと会ってるところを見ました」
落ち着いた所で、ようやく昨日のことを話す。
郁也さんがその言葉に対してどう返すのか、それ次第で彼との関係性が決まるかもしれない。
そう考えると怖くて、同時に緊張していると、数秒の沈黙後に彼が言葉を返してきた。
「香織とは昨日で全部終わらせてきた」
「……え」
予想外の回答だった。
言葉の理解に遅れ、思わず顔を上げる。
けれど郁也さんがあまりにも優し気な表情で私を見てきたため、また泣きたくなると同時にその言葉は事実だと思えた。
「昨日、お前も街に行っていたんだな。どの場面を見たか知らないが、香織とは昨日で全部終わらせるつもりだった」
「……楽しそうに笑っていました」
「あー、じゃあご機嫌取りの場面か」
「ご機嫌取り……?」
「機嫌が悪いと途中で帰るやつだから、機嫌が良い時に全部話をしようと思ってな」
それで、わざと楽しそうに振る舞っていた……?
私はその言葉を信じて良いのだろうか。
「それにしてもお前がそれを見て乱すとはな?面白いモノが見れた」
「なっ……違います!私はただ香織さんとの時間を優先したいだろうと思って……」
「香織はお前の言う通り、俺の金目当てだった。あいつは他にも男たぶらかして、貢がせてたみたいだ」
馬鹿だろう?と郁也さんは軽く笑っていたけれど、馬鹿さでいえば私も負けていない気がする。
それだと私たちは互いに馬鹿同士だということになってしまう。あながち間違いではない気がするけれど。