望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。
「本当は出掛けた時に渡したかったが、今ここで全部伝えた方が良さそうだな」
郁也さんは独り言のように小さく呟いた後、私から離れてリビングの中へ入るよう促してきた。
言う通りに中へ入ると、彼はソファに座った。隣に座れということだろうか。
不審に思いながらも、ソファへ座ろうとした時だった。ソファ前のテーブルに何かが置かれていることに気がついた。
「これは……何ですか」
「開ければわかる」
郁也さんはそれを手に取り、私に渡してきた。
手のひらサイズの、四角い箱に入った物を渡され、これはクリスマスプレゼントかなと思った。
郁也さんは恥ずかしそうに顔を背けていたのが気になったけれど、それより先に箱の中身を見ようと思った。
アクセサリーが入っていそうな箱を見て、最初はネックレスかと思ったけれど、その中身は──
キラキラと美しく輝くダイヤモンドが際立っている指輪だった。
「これって……」
「政略結婚に婚約指輪などいらないと最初は思っていたが……気が変わった。それには一生大切にするという意味合いが含まれているそうだな」
郁也さんが笑う。
つい先程まで恥ずかしそうにしていたのに、今は私の反応を見て、予想通りだったのか、何処か嬉しそうに。