望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。


 彼の瞳はしっかりと私を捉えていて、視線が交わった今、もう逸らせないと思った。

 躊躇うことなく、さらに彼は私との距離を縮めてくる。
 一方で私も当然のように目を閉じて、互いの距離はゼロになり──


 指輪をつけてくれた後のそれは、まるで誓いのキスのようだと思った。


 婚約指輪も、先程の彼の言葉だって、思い返せばすごく嬉しい気持ちに駆られて。

 今の私は幸せに包まれているようだ。


「今日はもう家で過ごすか」

「えっ、どうしてですか。今からでも遅くないと思います」

「今の朱莉を誰にも見せたくない。単なる俺の我儘だ」


 恥ずかしいことをさらっと口にする郁也さんに、聞いている私が照れてしまう。


「それなら尚更行きましょう」
「まだイルミネーションまで時間があるだろ」

「イルミネーションだけが目的じゃ……んっ」


 身の危険を感じて説得しようとしたけれど、郁也さんは強引に唇を重ね合わせてきた。

 徐々に互いの体勢が崩れていき、息が乱れる頃には押し倒されるような形になっていた。


「朱莉──愛してる」

 恋人繋ぎのように、互いの手を握り合う。
 少し強引なキスに心も体も満たされていく。

 それでもまだ物足りないと思う程、私も郁也さんを求めていた。


 今はまだ『愛しています』と言葉にするのは恥ずかしいけれど、キスより先の行為にも抵抗することなく受け入れていた。

 いつか私からも『愛しています』と言葉にできるように、心の中で呟きながら。



END


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