望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。


 朝の会話を思い出すだけで苛立ちが募り、忘れようとしても郁也さんの言葉が何度も脳内再生される。

 そんな状態の中で受けた講義は集中できるはずもなく、友達にもかなり心配された。


 結婚のことは、同じ学部やサークルで仲の良い友達にだけ話している。

 相手は良い人だと嘘を吐いてしまったけれど、いつまでもその嘘を通すのは難しそうだ。


 けれど今日、講義が終われば待ちに待ったアルバイトがあるのだ。

 そのために苛立ちを抑え、友達に笑顔で『大丈夫』だと答える。


 全ての講義を終え、時間は午後3時をすぎたところだった。

 アルバイトの時間は18時からだったけれど、今日は絶対に家に帰ってご飯を作ることはしないと誓っているため、かなり時間に余裕があった。

 けれどアルバイト先でのんびりしようと思い、私はそこへ向かうことにした。


 晴れた青空が広がる中、私は人が疎らな電車に揺られていた。

 久しぶりのアルバイトであるため、体が鈍っていないか心配になりつつ、気づけば耳につけているホワイトゴールドのピアスに指を添えていた。


 これは“あの人”──アルバイト先の先輩が私にくれた誕生日プレゼントだ。

 先輩が選んで買ってくれたらしいけれど、中身がピアスだった時は驚いた。

< 14 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop