望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。
何故なら私は元々、ピアスではなくイアリングをつけていたからだ。
どうやら先輩はそれをピアスだと勘違いしてしまったらしい。
それに気づかれた時には何度も謝られ、別のを用意すると言われたけれど、私は先輩が選んでくれたそのピアスが良かった。
そのため、ピアスの穴を開けることに躊躇いはなかった。
先輩が異性である私のためにわざわざピアスを選んでくれたのだと思うと、たまらなく嬉しくて、どうしてもそれをつけたくなって。
多少の痛みは伴ったけれど、何より喜びの方が大きかった。
つい頬が緩む中、私の降りる駅に着いた。
そこはアルバイト先の最寄駅で、学校から家までの間にある駅だった。
駅から歩いて10分も経たないうちに見えてくるのは、私のアルバイト先のカフェである。
閑静な住宅街の一角にあり、表はガラスの窓になっており、ホワイトとライトブルーがメインの内装となっているお洒落な店内が一望できる。
ドアを開けて中に入ると鐘の音が店内に鳴り響き、店員の『いらっしゃいませ』という声が届く。
「あっ、朱莉ちゃん。久しぶりだね」
「慎二さん!お久しぶりです」
キッチンから顔を覗かせたのは店長の慎二さん。30代後半で、大人の色気漂うかっこいい店長として評判の人だ。