望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。
結婚後、私と郁也さんは互いの両親がお金を出し合って買った一軒家に暮らしている。
マンションの一室などで良かったのに、奮発して地下ありの二階建てを用意されてしまった。
どうやら地下のある家を希望したのは郁也さんらしい。その理由は一緒に暮らし始めた初日でわかったのだけれど。
『基本的に俺は地下で生活をする。仕事も寝るのもだ。だから絶対に地下には入るなよ。俺の私生活をお前に邪魔されたくないからな』
リビングで寛ぐ間もなく、彼の口から放たれた冷たい言葉。
自分勝手な物言いに腹が立ちながらも、素直に受け入れる言葉を返そうと思ったけれど。
『わかりました。特に貴方の仕事や私生活など興味がないので、元々地下には行かないつもりでしたが。……ああ、ちなみに私の目につかない場所であればエッチな本やビデオなどを観てくれて構いませんよ。欲求不満で襲われても困るので、どうぞ一人で解消してください。別に女性を連れ込んで解消していただいても結構ですので』
つい口を滑らせて、余計な一言を付け加えてしまったのは反省しなければならない。
いくら相手に腹が立ったからといって、子供っぽく言い返すのはプライドが許さない。
その後の空気は最悪だったけれど、互いに自室へ行ったことによって何とか言い合いは避けられた。
どうやら地下も結構広いらしく、彼は家にいる殆どの時間を地下で暮らしている。