望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。
「郁也さん、お待たせしま……」
途中で言葉が途切れたのは、郁也さんの格好を見たからである。
彼は白のカットソーに黒のパンツ、ベージュのジャケットというシンプルな格好で、もちろん変ではないし、むしろ整った顔に似合っていた。
ただ──互いに黒いパンツに上着の色が同じベージュで、微妙に被っていたのだ。
周りから見れば格好を似せていると思われそうである。
「あの、今から着替えてきますね」
「……その必要はない。早く行くぞ」
郁也さんに嫌な顔をされて余計な一言を口にされる前に着替えようと思ったけれど、彼は立ち上がって玄関に向かった。
早く買い物を終わらせたいのだろう、私も着替えることなく彼の後ろについていく。
家を後にし、てっきり近くのスーパーまで歩いていくのだと思っていたけれど、彼はガレージに停めている自分の車の鍵を開け始めた。
「え、郁也さん。家の近くのスーパーに行くんですよ?」
車を使うほどの距離でもない。
それに、仲の良さを見せしめたいのなら尚更歩いていくべきな気がする。
「本気で近くのスーパーに行くつもりだったのか?」
「そうですけど……」
「今日一日暇なんだろう。だったら少し遠い所に行けばいい」
そんな突然予定を変更させられても……いや、そもそも行き先までは決めていなかったけれど。