望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。
「なんだ」
「私の話を聞いてました?別に今は欲しい物がないんです。それにアルバイトをしているので、自分の欲しい物くらい自分で買います」
「は……?」
ここで郁也さんが二度目の驚いた表情を浮かべる。
この人、私を何だと思っているのだろう。
ブランド物に全く興味がないわけではない。
いくつか持っているし、親が買ってくれた物もある。
けれど、そう何個も欲しいほどブランド物に執着はしていない。
別に有名なブランドでなくても、可愛い服や鞄、アクセサリーなどたくさんあるのだから。
「遠慮してんのか?」
「遠慮も何も、そこまでブランド物に執着していませんし。あとデパートの食材は高いので、普通のスーパーがいいです」
私のお父さんは社長という位でたくさん稼いでいるけれど、金銭感覚はそこまでズレていないと思う。
そのため、私の親が社長だと知った友達にはよく驚かれたものだ。
まあ郁也さんと住んでいる一軒家を、いくら半額とはいえローンも組まずに一括購入したのはさすがの私も驚いたけれど。
それほど私と郁也さんの結婚が嬉しかったようだ。
「そんな風に断る女は初めてなんだが……本当に要らないんだな?」
「何回も言わせないでください。そもそもブランド物ばかり欲しがる女性って、普通に貴方のお金目当てではないのですか」
「香織を侮辱する気か」
なるほど、今の様子からして、香織さんはブランド物を欲しがっているようだ。