望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。
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「おい、こんな所で寝るな。風邪ひくぞ」
「ん……」
可愛気のない女がソファの上で、今日買ったばかりの三毛猫クッションをを抱いて眠っていた。
普段はプライドが高く、気の強そうな顔をしているが、今はあどけない表情で無防備な姿に、不思議と笑みがもれる。
何だ、こいつにも可愛い一面があるのかと素直に思う自分がいた。
『互いに望まない結婚だということで、3年以内に離婚という形で大丈夫ですよね?』
忘れもしない、式を挙げた日の夜。
ホテルで政略的に結婚した相手──九条朱莉が俺の目をじっと見つめて離婚話を口にしたことを、昨日のことのように思い出せる。
両親は元々、香織のことをよく思っていなかった。
確かに出会いは同僚に連れてこられたガールズバーだったが、今は辞めて本職の方に力を入れていると言っていた。
互いに愛し合っている同士なら、過去の経歴など関係ないと思っていた。
だが両親は俺たちの付き合いを認めず、結婚するなら縁を切ると言われた挙句、7つも下の子供と結婚話まで持ち出してきた。