望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。
初めてその女と会った時、正直7つも下に見えないほど大人びていて、俺の妻になる相手としては許容範囲だった。
ただしそれは顔だけであり、かなりひねくれた性格をしている女で、本当に可愛気がなかった。
上から目線の物言いに何度腹を立てたことか。
こんな女が妻など俺も運が悪いと思ったが、一緒に暮らしてみれば考えは変わるものである。
そう、彼女は超がつくほどの真面目だった。
彼女の言動に腹が立ち、基本的に地下で過ごしていたが、朝起きれば必ずご飯がラップをして置かれているし、お弁当も置かれていた。
仕事から帰って来れば、家事は全て終わっていて、さらに夜ご飯の準備までされている。
いつまで続くだろうかと半ば試すつもりで見ていたが、彼女は毎日毎日家事を一人でこなしていた。
さすがの俺も徐々に罪悪感を抱いていき、同僚の朝春に何度相談したことだろう。
結局朝春には『お前が素直になれ』と言われたが、いざ彼女を前にすると、どうしても言いたいことが言えなくなる。
何故だか負けた気になって悔しいのだ。
「ほら、起きろ」
「……郁也、さん?」
不覚にも胸が高鳴った。
何処か眠そうな、潤んだ目で俺を見上げる姿が可愛いと思ってしまった。