望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。


「郁也さん、どうしてここに……」
「迎えに行くって言っただろ」

「でもそれは必要ないと返しました」
「俺はその返事を受け入れた覚えはない」

「なっ……」
「早く車に乗れ」


 郁也さんは駅前のロータリーに車を停めていて、そこに連れてこられた。

 どうやら車で来てくれていたようだ。


 彼は有無を言わせぬ圧力で私を助手席に乗るよう促してきた。

 これから拉致でもされそうな勢いで、少し……いや、かなり怖い。


「お邪魔します……」

 郁也さんの車に乗るのはこれで二度目。
 ショッピングモールに行って以来、二人で買い物に行く時は近場のスーパーにしているからだ。

 毎回ショッピングモールへ行くものでもない。


 助手席に乗ってシートベルトをつけていると、郁也さんも運転席に乗り込んだ。


「……」

 郁也さんの運転中、気まずい空気が車内に流れていた。

 まるで最初の頃に戻ったようだ。
 気のせいかもしれないけれど、郁也さんが怒っているというか、機嫌が悪い気がする。


「ご飯は食べましたか?」

 飲み会へ行く前に郁也さんの分のご飯を作ってから家を出たため、不機嫌な理由はそれではないと思うのだけれど。


「ああ」

 人がせっかく気を遣って聞いてあげたというのに、たった二文字で会話が終了される。

 郁也さんの心理がわからずにため息がもれた。


「あいつがお前の好きなやつなのか」

 交差点の信号が赤になったタイミングで車が止まった時、いつもよりトーンの落ちた声で郁也さんが尋ねてきた。

< 83 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop