望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。
「郁也さん、どうしてここに……」
「迎えに行くって言っただろ」
「でもそれは必要ないと返しました」
「俺はその返事を受け入れた覚えはない」
「なっ……」
「早く車に乗れ」
郁也さんは駅前のロータリーに車を停めていて、そこに連れてこられた。
どうやら車で来てくれていたようだ。
彼は有無を言わせぬ圧力で私を助手席に乗るよう促してきた。
これから拉致でもされそうな勢いで、少し……いや、かなり怖い。
「お邪魔します……」
郁也さんの車に乗るのはこれで二度目。
ショッピングモールに行って以来、二人で買い物に行く時は近場のスーパーにしているからだ。
毎回ショッピングモールへ行くものでもない。
助手席に乗ってシートベルトをつけていると、郁也さんも運転席に乗り込んだ。
「……」
郁也さんの運転中、気まずい空気が車内に流れていた。
まるで最初の頃に戻ったようだ。
気のせいかもしれないけれど、郁也さんが怒っているというか、機嫌が悪い気がする。
「ご飯は食べましたか?」
飲み会へ行く前に郁也さんの分のご飯を作ってから家を出たため、不機嫌な理由はそれではないと思うのだけれど。
「ああ」
人がせっかく気を遣って聞いてあげたというのに、たった二文字で会話が終了される。
郁也さんの心理がわからずにため息がもれた。
「あいつがお前の好きなやつなのか」
交差点の信号が赤になったタイミングで車が止まった時、いつもよりトーンの落ちた声で郁也さんが尋ねてきた。