望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。
「何か飲みますか?」
「必要ない」
とはいえ機嫌は直っておらず、私に視線を向けずにテレビの画面をじっと見ていた。
明らかに興味のなさそうな顔をしているのに……怒っているのはやはり私が原因だろうか。
「あの、郁也さん」
「何だ」
「どうしてそんなに不機嫌なんですか」
ストレートに聞いてしまった気がするけれど、遠回しに尋ねるなどといった高度な技術を私は持ち合わせていない。
「……はぁ」
郁也さんの返答を待っていると、彼は質問に答えるどころか、盛大なため息を吐き始めた。
ため息を吐きたいのは私の方である。
「何で俺が風呂入ってる間に寝とかないんだよ」
「はい?」
「こっちはお前を見る度に腹立ってんだ」
「待ってください、私が悪いんですか?」
「当たり前だ」
「意味がわからないです!私を見る度に腹が立つなら、前みたいに地下に籠ればいいじゃないですか!わざわざ郁也さんを待っていたのに、そんな言い方をするなんて最低ですね!」
郁也さんの言葉や態度に腹が立ち、耐え切れず私も言い返してしまう。
「わかりました。私の顔を見るのが嫌なんですね?今後はなるべく郁也さんの視界に入らないよう細心の注意を払わせていただきます」
もうどうにでもなれ、という勢いで話し、部屋へ向かおうとソファから立ち上がった──はずなのに。
郁也さんの手が私の腕を掴み、強引に引っ張られ、再びソファへと座らされる。
というより、体のバランスが崩れてソファに尻餅をついたという表現の方が正しい気がした。