望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。
何が『夫婦として当然の行いをした』だ、偉そうなことを言って。
本物の夫婦の関係など求めていないくせに。
ついに欲求不満の解消に私を使ってきたのかもしれない。
心臓が大きな音を立てる中、しばらくは郁也さんと距離を空け、口を利いてやらないのだと決めたけれど──
「昨日は……その、悪かった」
次の日の夜。
仕事帰りの郁也さんとリビングで鉢合わせてしまい、最悪だと思っていたのも束の間、何と彼から謝罪の言葉を口にされた。
彼の謝罪に驚くあまり、反応ができないでいると、長方形の白い箱を彼に渡され、反射的に受け取った。
「あの、これは何ですか」
「詫びの品だ」
まさか本当に反省しているなんて驚いた。
怒りよりも驚きが勝ってしまい、つい箱の中身を確認してしまう。
「わっ、ケーキだ……!」
白い箱の中にはケーキが4個入っていて、ショートケーキとチョコレートケーキ、チーズケーキとモンブランだった。
「お前の好みがわからなかったから適当に選んできた。嫌いなやつがあったら捨てればいい」
「せっかく郁也さんが買ってきてくれたのに、捨てるはずありませんよ。郁也さんも一緒に食べましょう」
珍しく郁也さんから謝ってくれたのと、ケーキの喜びが大きく、つい明るい声で話してしまう。
一人で食べればいいのだけれど、好きなものは共有したくなってしまうのだ。