望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。


「お前はすぐ怒るんだな」
「まさか。郁也さんが私を怒らせる天才なんです」


 ふふっと小さく笑ってみせた結果、二人の間に流れるのはいつもの不穏な空気。

 これが私たちの通常運転なのだと割り切るしかなさそうだ。


「……部屋には戻るなよ」

 気まずい沈黙が流れていると、郁也さんがボソッと低い声で呟いた。


「では早く食べてくださいね。私もケーキが食べたいので」

「今から食べたらいいだろう」

「何を言ってるんですか。ケーキは一人で食べるより二人で食べた方が美味しいです」


 それにご飯を食べている人の前でケーキを食べるのは浮いている気がして嫌である。


 郁也さんは納得してくれたのか、それ以上何も言わずにご飯を食べ進めていた。

 彼が食べ終わる頃合いに、私は冷蔵庫に直していたケーキの箱を取り出した。


 どれも美味しそうだったけれど私はモンブランを選び、郁也さんはチーズケーキを選んでいた。


「んっ、美味しい……!」

 モンブランは中までたっぷりとクリームが入っていて、とても美味しく、つい言葉にしてしまう。

 夢中になって食べていると、ふと向かい側から視線を感じた。


 案の定、顔を上げると郁也さんが私を見ていた。
 それも彼にしては珍しく、優し気な表情で。

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