望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。
無難な柄のネクタイだったけれど、郁也さんに似合いそうだと思った。
クリスマスプレゼント用に包装してもらい、外に出た頃には日が沈み、空は真っ暗だった。
とはいえ繁華街は明るく、とても夜とは思えないけれど。
夜になり人が多くなる中、私は駅へと向かって歩く。
今日、郁也さんは外で食べるらしく、朝に顔を合わせた時にご飯は要らないと言われていた。
そのため今日は自分も外でお弁当でも買い、家で食べようかと思った。
家近くのスーパーで買うか、それとも繁華街にあるお弁当屋さんで買うか。
悩んだ結果、お弁当屋さんで買おうと決める。
一度信号に引っかかり、青になるのを待っている間、何度か行ったことのあるお弁当屋さんへの道順を思い返していた時だった。
道路を挟んだ向かい側の歩道を歩いている男女の姿が視界に映り、心臓が嫌な音を立てる。
仕事帰りなのだろう、スーツ姿の男性と、一度家で見たことのある派手なメイクに露出の多い格好をした女性──
郁也さんと香織さん、間違いなくこの二人だった。
香織さんは郁也さんの腕を組み、彼を見上げて笑っている。
郁也さんは横顔しか見えなかったけれど、香織さんと同じく何やら楽しそうに笑っている気がした。
二人は繁華街から少し外れたところにある、バーやホテルなどの多いネオン街の方向へと歩いていた。