望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。


 信号が青に変わっても渡らないまま、その場で立ち尽くし、遠くなる二人の姿を目で捉えていた。

 郁也さんは『外で食べるから夜の飯はいらない』とだけ言い、誰と行くのかは話されていなかった。


 そのため、相手が香織さんの可能性もあったというのに、どうして私は勝手に相手が男性だと思い込んでいたのだろう。


 郁也さんが愛しているのは香織さんだと、初めて会った時から伝えられていたのに。

 郁也さんの心には、ずっと香織さんがいることをわかっていたはずなのに、どうして私は──


 クリスマスの日に誘われてプレゼントを用意する程、浮かれていたのだろう。

 急に泣きたくなって、手にしているネクタイの入った紙袋を捨てたくもなった。


 胸が痛いと思うほど締め付けられ、視界が涙で歪む。

 違う、今は泣く所ではない。
 郁也さんが誰と関係を持とうが私には関係ない、どうせ3年以内に離れる仲なのだからと思うべきなのに。


 胸が苦しくて、感情が乱されていることが悔しくて、同時に虚しくなった。

 馬鹿みたいだ。


「本当に馬鹿みたい……」

 涙を必死で堪え、お弁当屋さんに行く気力もなく駅へと向かう。

 結局食べる物を何一つ買うことなく家に帰り、先にお風呂にだけ入って部屋へと籠る。


 プレゼントの入った紙袋は3段チェストの上に乱雑に置いたままだ。

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