望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。
今頃、郁也さんと香織さんは楽しい時間を過ごしているのだろう。
そんなことを考える自分が嫌になる。
どうして私がこんな思いをしなければいけないのだ。
こんな思いをするなら、離婚する日が来るまで深く関わることなく、冷めた生活を送り続けた方がずっと良かった。
それならいっそ、冷めた生活に戻せばいい。
鞄からスマホを取り出した私は、迷うことなくあの人へと電話をかけていた。
メッセージより電話で直接話した方が早く話が進むと思い、通話ボタンを押したのである。
『……もしもし、九条さん?』
数コールの後、スマホ越しに柔らかな声が聞こえてきて、途端に心が落ち着ついていくのがわかった。
「優希くん、遅くにすみません」
電話の相手はもちろん優希くんで、今すぐ話したいことがあった。
『間違い……じゃなさそうだね』
「はい」
『俺にどんな用があったの?』
優希くんは面倒がらずに話を聞こうとしてくれて、本当に救われた。
「……明日のこと、今からでも間に合いますか」
『明日?』
「クリスマス、優希くんと過ごしたいです」
郁也さんとは上辺だけの関係なのだから、クリスマスに一緒に過ごす必要なんてない。
むしろ私が断れば、彼は香織さんと過ごせると喜ぶかもしれない。
『……九条さんはそれで良いの?』
痛い所を突かれ、一瞬言葉に詰まらせたけれど、「良いんです」と答える。
私だけが律儀に守っていると考えると、急に馬鹿らしく思えてきたのだ。
『そっか。じゃあ明日、会おう』
優希くんは私が行くことにした理由を尋ねることなく、明日の集合時間や場所などを決め、電話は終了した。