望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。


 どれくらい時間が経ったのだろうか。
 ぼうっとしていると、部屋の外から足音が聞こえてきたことで、ハッと我に返る。

 もしかして、この足音の主は郁也さんだろうか。
 普段は2階に来ないというのに、どうして今日に限って来るのだと思っていると、部屋のドアがノックされる。

 肩が跳ね、つい息を潜めてしまう。


「帰ってきているんだろう。どうして下にいない」

 ドアの向こうで郁也さんの声が聞こえてきた。
 私が何処にいようと関係ないというのに。

 気づかぬうちに、リビングで過ごすことが当たり前になっていたようだ。


 無視を決めて黙り込んでいると、彼は許可もなく部屋のドアを開けて中を覗いてきた。


「やっぱり部屋にいたな。返事くらいしろ」
「……放っておいてください」

「どうしたんだ、そんな暗い顔して。何かあったのか?」


 彼は部屋の中に入ってきて、私に近づいてきた。

 心配されるような間柄ではないというのに。
 郁也さんは心なしか明るい雰囲気を纏っていて、さらに苛立ちが募っていく。

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