変りたい自分
 そのあとは何を離せばいいのか分からないから沈黙が続くが、すぐに下校の放送が流れた。
「帰ろうか。大松さんは方向どっち?」
「駅の方です」
 私の返事を聞くと矢部君の表情が変わった。
「なんでそんなにうれしそうなのですか? 矢部君さんも同じ方向なのですか?」
 矢部君は私が言った言葉に顔を赤くした。
 今まで見た事のない矢部君の姿に私は顔には出さなかったが、少しテンションが上がっていた。
「俺は電車に乗って一駅なんだ。駅の方なら家まで送っていくよ! 送ってもいいかな?」
 赤面しているのは納まってはいなかったが、矢部君は嬉しそうにしていたが、話を変えた。
「いいです。駅までも遠いのですから。帰るの遅くなりますよ」
 一駅先なのに送ってもらうのは申し訳ないし、帰る時間も本当に遅くなるからお打ってもらわなくていいのに。
 学校から家までの間に何もないから、心配しなくてもいいのに。
 私が断っても矢部君は、着いてきていた。
 駅に行く道から外れる道に入る前に私は止まった。
「どこまで、ついてくるのですか?」
 矢部君も止まって、笑った。
「ここまで来たんだから、送っていってもいいじゃないですか?」
 どこまで来ても駅から離れていくのは変わらない、なのにそこまでして送らないと行けのか?
 私はどうやって帰らすか初めの方か考えていたが、どんなに言っても帰ってくれそうになかったので、諦めることにした。
「分かり居ました。でも駅から少し遠いですよ」
 駅から遠いと言っても帰らないので、最後に分かっていて聞いた。
「いいよ。女の子一人で帰らすより、全然いいよ」
 矢部君さんはさらっとそう言うことを言うから、女の子からも人気があるんだろうな。
 なのになんで私なんかに構っているんだろう?
 私より、もっといい女性なんてたくさんいるし、切ったみんな矢部君さんの事好きになると思うのにな。
 自分が矢部君と一緒にいることが不思議で仕方がなかった。

 家につくのにそんなに時間はかからなかった。
 家の間につくと矢部君は満足をしたのか、笑顔を浮かべていた。
「送っていいただき、ありがとうございました」
 初めは帰ってもらおうと思っていたのに、なんだかんだ矢部君さんといる帰り道が楽しかったなぁ。
 誰かと帰るなんて小学生以来だし、たまにはいいかもしれない。
 私はお礼を言い終わった時には、笑顔になっていた。
「大松さんの笑顔が見れるなんて、やっぱり送ってよかったと思うよ!」
 矢部君さんと友達になれたら毎日が楽しいんだろうな。
 でも、まだ人前で話すことは無地かしいけど、いつか普通に矢部君さんと話したいな。
 自分からこんな風に考えることがなかったので、矢部君は本当にすごい人なのだと私の中で、存在が大きくなっていた。
「じゃ、また学校で」
 矢部君が手をある程度離れると、私に背中を向けた。
 私はその背中を見えなくなるまで眺めていた。


 朝学校につくと矢部君の姿はまだなかった。
 矢部君さん、まだ来てないのかな?
「おはよう、大松さん」
 急に声をかけられて驚いた私は、変な声が出てしまった。
「今の声、もしかして大松さん?」
 矢部君と話している姿をほとんどの人が見ており、怖さと変な声を出した恥ずかしさによって、頷く個しかできなかった。
 まだ人前で話すのは無理なのに、驚いて変な声が出ちゃったよ。
 せっかく話せかけてくれたのに、他の人の視線が刺さるから話すなんて無理だよ。
 うれしくも思っていた私だが、矢部君と話いたのを後悔していた。
 やっぱり矢部君さんみたいな人が渡足と話せいているなんて、時間がもったいないよ。
 私は矢部君と話した放課後の事を後悔していた。

 そんなことを一日考えていると放課後になった。
 矢部君にはもう話さないことを伝えようと、教室に残っていた。
「大松さん。今日の朝、話してくれなかったね。なんで?」
 矢部君は私が人前で話せることを知らなかった。
 昨日案だけ話していたけど、そのことに関しては何も話していなかったんだ。
 こんなこと言われたら矢部君さんでも、もう話してくれなくなるよね。
 私は矢部君と話せなくなることに、少し悲しんでいた。
 自分で断るのに悲しくなるなんてかしいけど。
 そして矢部君の質問を答えるために、口を開いた。
「人前で話すのは、恥ずかしくて。それと矢部さんはモテますので、周りの視線が怖くて。人が多い場所では球が真っ白になって話せなくなるので……」
 その先の言葉は続かなった。
 なんで、「これ以上もう話しかけないで」って言うだけじゃない。
 その一言がんで口から出ないの。
 でも人が多い場所で話せないとなると話す意味もなくなるから、別に言葉を続けなくても矢部君さんとはもう話せないんだ。
 私は矢部君の顔を見ることができなかった。
「分かった」
 その言葉を聞いた時、私は咲來以外、話すことがないんだと思い始めた。
 だけど矢部君が続けた言葉に耳を疑った。
「話せるときになったら朝も話してよ。うざくないなら朝も話しかけるの続けるけどいいかな?」
 その言葉に私は泣きそうになっていた。
 矢部君さんはなんでここまで私に構ってくれるの?
 その疑問が頭をよぎったが、私の中には喜びだけがあった。
「これからも話してくれるんですか?」
 私の言葉に矢部君は笑った。
「当たり前じゃん。俺大松さんと話しているの楽しいよ。それに、周りとは何か違う感じがして、いつも向けてる顔じゃなくてもいいんだって思えるんだ。だからもし大松さんが、大勢の前で会話もできなくて困っているなら、助けになりたいんだ」
 矢部君の言葉に私はうれしかった。
 こんな私でも、誰かを明日蹴ることができるんだ。
 それにこれからも矢部君さんと話してもいいんだ。
「でも、今は朝話せないから放課後、時間がある日話したいなって考えているけど」
 矢部君が話してくれる努力をしようとしているのが、分かるのが嬉しかった。
「私は毎日残っていますが、矢部さんは部活があるんじゃないんですか? 今日も残っていますが」
 矢部君と話すことは楽しいが、部活しているのにこんなに時間がるのかと思い始めた。
 私は部活に入っていないから分からないけど、サッカー部ってみんな忙しそうにしているのに余裕があるのかと思い始めた。
 矢部君は苦笑いをしながら話した。
「今日はずる休み。大松さんと話したかったから、ずるしちゃった」
 最後の言葉と行動がすごくかわいい。
 あんな顔もできるんだ。
 でもこれから残るのに毎回休まれるのは、私が耐えられない気がするし……。
「じゃ、矢部さんが部活休みの時には屋上で話しませんか? ここでしたらたまに人が着たりしますし」
 自分で言っておきながら、驚いた。
 私は矢部君さんとそんなに話したかったのかな?
 矢部君は少し寂しそうな顔をしていた。
「そうだね。じゃ、休みの日は連絡するから教えてくれないかな?」
 咲來以外と連絡先を交換したことがなかった私は、喜んでいた。
 家族と咲來じゃない連絡先が私の携帯に入ってる。
 こんなことあっていいのかな?
 でもうれしいなぁ。
 私は全く顔に出さなかった。
「分かりました。では今日は遅れてでもいので部活に行ってください」
 交換も終わったので、私がそう言うと寂びそうな顔がはれる事は無かった。
 悲しんでくれることはうれしけど、私と話す為だけに将来の可能性をつぶしたくないな。
「でもな。せっかく仲良くなれたのに、もったいないな」
 矢部君は少しでも話したそうだったが、私は部活に行ってほしいと思っている。
「人がいなければ話ぐらいはします。でも部活行かないならもう矢部君さんとは話しませんよ」
 せっかく部活に入っているので自分以外の人も大切にしてほしいと感がいていた。
 仕方なし矢部君は部活に向かうことにして教室のドアを開けて止まった。
「わかった。今言ったこと絶対だから」
 私が頷くと矢部君は部活へと走っていった。
 矢部君さんは私の何がそんなにいいのだろう?
 私なんて話していても楽しくないと思うのに、でも私はなんだかこの時間が楽しいな。



朝、矢部君よりも早く来ていた私は自分の席に座って本を読んでいた。
「大松さんおはよう!」
 本に集中していた私は、肩に手を置かれて驚いた。
「おっはようございます」
 驚いたままは挨拶をしていしまったので、おだけが裏返ってしまった。
 そして矢部君は私にしか聞こえない声で話した。
「今日は部活ないのだけど」
 メールをくれればいいのにと私は思っていたが、矢部君は少しでも話したいのだと顔に書いてあった。
 そんなに話したいのですか?
 だけど私は話すことができんかったので、頷いて聞いていることを現した。
「……」
 そのあとは矢部君はクラスの女子が話しかけていたので、話が続く事は無かった。
 そこから私は、矢部君と話す事は無かったが、放課後が楽しみで仕方がないほどわくくぁくしていた。

 そして私が楽しみにしていた放課後になった。
 終礼が終わると、私は屋上に向かった。
 矢部君が来ていないと分かっていても、とりあえず向かいたかったのだ。
 私が屋上に着いてから少し時間がたつと、屋上のドアが開いた。
「待っていましたよ。矢部さん」
 入ってきた矢部君は少し息が乱れていた。
 矢部君さん、走って来たのかな?
 私が不思議に思っていると、矢部君は息が整っていないまま話してくれた。
「良かった。反応してくれたけど、帰ったかと思った」
 矢部君は息を整えながら、私のほうに歩いてきた。
 そんなに急がなくても帰らないのに。
 私矢部君さんに約束を守らない人と思われているのかな?
「来ない日は学校にも来ていません」
 家にいるのも気まずくて、学校には毎日来ていた。
矢部君がどうとらえたのか分からなかったが悲しい顔をしだした。
私が無理でもしていると考えたのかな?
普通に風などで行けないという意味で言ったのだけど、学校に来たくないと思われたのかな?
教室では私一人だし。
そんなことを考えていると、矢部君は悲しそうな顔をしていたが、何かに頷いた。
「その時は連絡してね。お見舞いに行くから。家知らないけど絶対行くよ!」
 矢部君の顔にも絶対に行くと書いてあった。
 だけど私的には、自分が休んでいる日ぐらいクラスの事少しでも遊んでほしいと思っている。
 私ばかり構われても他の子が話したそうにしているから、それに気付いてほしい。
私といるよりも楽しいはずだから、休みの日ぐらい他の人と遊んでほしいのだけど、矢部君さんはどう思っているんだろう?
「大丈夫ですよ。私が休みの日は、他の人と遊んでください。たまには遊んであげないと皆さん悲しんでしまいますよ」
 笑顔で言うと、矢部君はまた悲しそうな顔をした。
 毎回私に構って矢部君さんは何も言われていないのだろうか?
 何か言われていたら、私はどう動いたらいいのか分からないけど、できるだけすぐに離れるようにしないと。
 心配になっている私を気にせず矢部君は笑顔になって言った。
「いいよ。みんなとは休み時間に話せるし、休みの日に呼び出される時もあるから」
 休みまでみんなと遊んでいるのなら、いいのかな?
 でも、放課後に遊びたい人だっているよね。
 なのになんで私といてくれるのだろう?
「そうなんですね。矢部さんも意外と大変なんですね」
 自分と一緒にいてくれることは疑問に思っていたが、矢部君が楽しそうに話さないので気が付くと「大変」という言葉が出ていた。
 こんなこと言うなんて失礼言うなんて。
 矢部君が怒っていないかとそっと見るとはてなマークが浮かんでいた。
「どういうこと?」
 聞き返されると思っていなかった私はなんて答えようか悩んでいた。
 言って知ったものは仕方ないと思い、素直に思ったことを言うことにした。
「私、矢部さんの事ずっといいなぁって思っていました。みんなに人気で、何もしなくても人が寄ってくるじゃないですか。だからいいなって思っていたんですけど、矢部さんの意見聞いたら大変なんだなって思って」
 言っていて私は恥ずかしくなり、矢部君の方を見れなかった。
 しばらく見なくてもいいかと思っていたが、矢部君も話さなかったので気になって矢部君の方を見た。
 すると矢部君は嬉しそうにしていた。
「そんなの初めていわれた。みんな俺の事いいなって嫉妬したりする人はいるけど、大変だなんて初めていわれたよ」
 言われたことのない言葉に矢部君は目から雫を流した。
 そんなこと思う人今までいなかったのかな?
 嫉妬したところで何も変わらないの、なんで嫉妬なんかするんだろう?
「そうですか。何もできないと思いますが、辛い時にはいつでも来てください。ここでは何も考えなくてもいいですから」
 矢部君が少しでもこの時間を楽しと思ってもらうために私はそう言った。
 私といると楽しいって思うことないかもだけど、ここにいるときぐらいはつらいことを忘れてほしいな。
 ここから見る夕日はとてもきれいだから。
「ありがとう。やっぱり君といると落ち着くな」
 夕日に照らされた矢部君がそう言うと、私は照れてしまった。
 私の横が落ち着くなんて言われたことないよ。
 大体の人が外見しか見ていないのに、矢部君は違うのかな?
 でも、そう思ってくれているならうれしいな。
 それに矢部君が心の休めれる場所になるならいいかな。
「それは、ありがとうございます。あと、いつも私の話を聞いてくれてありがとうございます」
 咲來以外と話しることもなかったし、こんなに話を聞いてくれる人がいなかったので笑顔でお礼が言えて私はほっとしていた。
 もしかしたら、もっと自分からかかわっていこうとしたら、友達たくさんできるのかな?
 途中からそんなことを考えていた。
 下校時間まで屋上で話しており、帰りも家までしっかり送ってもらった。
 家に帰ってからは部屋で矢部君と話したこと思い出して、ニヤッとしていた。

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