「…………きみ、ほんとずるい」

 ごめんなさい、お付き合い出来ません。
 食べ終え、ドリンクを飲みながらたわいもない話をして、カフェを出た。その帰り道で、歩きながら唐突にそれを吐き出したのは、己の、何でも白黒はっきりつけておきたい性格(ゆえ)だろう。
 考えさせて欲しいと、時間をもらう人もいるのだろうけれど、私はそのタイプではない。結婚はタイミングだという言葉をたまに聞くけれど、恋愛だって、タイミングだと思う。だから、答えを出して、隣を歩く彼に伝えた。考えたところで、私の中のあるものはきっと、変わらないだろうから。

「……そう、ですか」
「はい。ごめんなさい」
「いえ。伝えられて、良かったです」

 また彼は柔らかく笑う。ほんの少し辛そうな感情がそこには混ざっていたけれど、私はまた、気付いていないふりをする。そうやって、鈍感を演じて、もうすぐ新しい企画が始まるだの何だのと当たり障りのない話をしながら歩いた。

「っ優美!」

 もう少しで会社につく、という距離まで来たところで、鞄を持っていた方の腕を背後から思い切り引っ張られた。
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