小説家と絵描きの日常
白い雪をぼんやりと見上げていると、雪菜は視線をふと感じた。横を見ると、よく見知った顔がある。

「柚葉ちゃん」

セーターを着たメガネをかけた女性が、スケッチブックとペンを手にして縁側に座っていた。何を描いているのかはわかる。空を見上げる雪菜の絵だ。

「ごめん、玄関開いていたから入っちゃった」

テヘッと笑いながら辻柚葉(つじゆずは)が言う。雪菜はフウッと息を吐き、「驚いたわよ」と言いながら柚葉のもとへ歩いた。

「ごめん!次の作品のイラストのことでちょっと相談があってさ〜」

柚葉は人気イラストレーターをしている。雪菜の友達である彼女は、雪菜の小説の挿絵を描いてくれることが多い。

「いいわよ。なら、お茶を入れるわね」

「は〜い!」

窓を閉め、お茶を用意するため、雪菜はキッチンへと向かう。チラリと柚葉を見ると、柚葉はこたつに入り、みかんの皮を剥いている最中だった。

緑茶と担当者からもらったカステラを用意し、雪菜は柚葉に「お待たせ」と声をかける。そして、着物に相応わしい優雅な動作で座った。
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