イモーションロックシンドローム〜永遠の絆〜
抑揚のない声で光は言いながらドアを開ける。ベッドや怪我をした人用の消毒液などが置かれた保健室はまだ真っ暗で、養護の先生は来ていなかった。しかし、光は構わずに保健室に置かれた机に教科書を広げる。

光は、イモーションロックシンドロームになってからずっと保健室登校をしている。感情のない特別な事情がある生徒が教室にいるのはどうなのか、と議論されたからだ。教室から追い出されたというわけなのだが、感情のない光は何も思っていない。

保健室で光は一日、勉強したり読書をしたりして過ごす。クラスメートや友達と呼べる存在はいないが、寂しさなどはない。

養護の先生が来るまでまだ時間がある。光はチラリと時計を見た後、国語の漢字ワークをやり始めた。心の病気とはいえ、ちゃんと勉強はしないといけない。

校庭の方から、運動部の朝練習の声が聞こえてくる。きっと様々な表情がそこにはあるのだろう。朝早く起きて眠いという顔、体を動かして楽しいという顔、今度こそ大会で優勝するんだという真面目な顔。その顔の作り方さえ、光にはもうわからない。
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