サプライズは素直に受け取って。
何も言わない僕を心配して熱がないかの確認なのだろう、僕の額に右手を当ててくる四季は心底不安そうな表情になる。
彼女の右手から甘い香りがし、誘惑に負けそうだがここはしばらく耐える。

「本当に大丈夫なの?
 どこか打ったりした?」

「大丈夫だし、どこも打ってない。
 ちょっとした不安感が過って…昔の……」
「昔?不安感?何かしらのトラウマ?まさか、PTSD?」

ふふ。なるほど。
医療従事者の彼女らしい見解だ。
もちろん、PTSDではないが。
単純に四季を失ってしまう不安が過っただけ。
何度も君には逃げられたから少し意地悪をしようか。

「四季が言うようにPTSDかもな。
 実はその原因は僕はよく知ってる。
 だから、治療法も知ってるんだ。
 四季に頼んでもいい?」

「へえ?
 治療法ってなに?」

「原因は四季。
 だから責任取ってね。
 それが一番の治療法。」

真っ赤な顔した彼女は恥ずかしくなり両手で顔を覆い隠す。
その左手の薬指を優しくつまんで、
「四季の誕生日カードに書いた事を実現しよう。
 僕と家族になってください。
 ここに嵌める指輪を用意してあるんだ。
 嵌めてくれる?」

と言うと顔から両手を外し僕に抱きついて「もちろん。」と返事をくれた。


いじわるな僕は確かな返事が欲しくて彼女に難題を言う。


この甘い雰囲気に紛れ込んでささやかなサプライズを君に。


















「ちゃんと誓って、四季からキスして。」



そう言うと更に真っ赤な顔になりながらも、「不束者ですが、末永く宜しくお願いします。」と言ってぎこちなく僕の唇に優しいキスをしてくれた。







この誘惑には負けても良いと結論が出たので、朝食の前に四季を頂く事にした。







朝からハードな僕の愛情表現に疲れきって眠ってしまった四季の左手の薬指に光輝く一粒の宝石をあしらった指輪を嵌め、その指にキスをする。



















誓いのキスは何度でもしてあげる。







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