その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~

そんなC健で営業を担当しているのが友藤さん。
去年の4月に系列病院の健康管理センターからC健に異動してきたらしい。

聞けばとても優秀で、大手企業やマンモス大学との契約をいくつも取ってきているとか。

確かに事務仕事で書類の管理をしていると、担当営業の欄に「友藤」の名前をよく見かける。

健診初日には、事務の担当者と共に必ず顔を出して挨拶をする。
始まってしまえば営業担当がすることはなく、事務が手配した医療従事者が健診をするだけ。
他の営業さんがわざわざ現場に顔を出しているところなんて見たことない。友藤さんだけだと思う。

先方に挨拶したあとは、ついでと言って契約している医師や看護師さん、技師さんにも挨拶して回り、差し入れを配るように事務のバイトの子に渡してくれる。

仕事だけじゃなく気遣い出来るマメな人なんだなというのが、まだ顔を合わせて話したこともなかった頃の印象。

しかしこの悪くない印象は、私がC健で働きだしてから3ヶ月もしないうちに跡形もなく崩れ去ることになる。


冬の足音が近付いてきた11月。私が入所して4ヶ月目。
9月10月の秋の繁忙期が終わり、私はファイル整理に追われる毎日を送っていた。

A2サイズの大きなバインダーには、どこの企業や学校がいつ、何人、どんな健診を受けたのかがプリントアウトされファイリングしてある。

それだけでも膨大な資料なのに、受診者全員の名簿、どの検診車を使ったのか、担当した医療従事者と事務やバイト全員の氏名、受診者の結果や再検査のお知らせ、紹介状の文書まですべてプリントアウトしてファイリングしなくてはならない。

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