その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~

『3ヶ月も付き合って1度もヤらせなかったくせに寝取ったなんて噂を否定もせず逃げやがって!』


……あぁ、きっとコレだ。間違いなくコレを聞いたせいな気がする。


私は訂正すべきか否か考えて、いずれスるなら経験豊富な彼にはバレるだろうと思い、正直に告白することにした。

「…あの、友藤さん」
「ん?」
「私のこと、処女だと思ってます?」
「………え?!」

目の前の彼の顔には「違うの?!」とバカ正直に書かれている。

「え、え?!だって…あいつが…」
「まぁ、賢治とはシてないですけど。私だって恋愛経験くらい人並みにありますよ」
「………」
「あの、友藤さん?」

開いた両膝に肘を乗せ、その間に深く頭を項垂れている。
どう声を掛けたものやら。

しばらくそのまま放置して、私も落ち着くために氷が溶けて薄まってしまったコーヒーを飲み干した。


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