その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~
「…言いたいことはいっぱいあるけど」
ようやく話しだした友藤さんの声は引くほど低い。
「あいつのこと、もう2度と名前で呼ばないで」
「…はい」
「あと、俺のこと名前で呼んで。敬語も仕事場以外ではやめて」
「…わかった」
「泊まってくよね?」
「……うん」
「何もしないって言ったの、取り消していい?」
「ダメ」
処女じゃないと知った途端、速攻で約束を破ろうとしてきた友藤さん、もとい遊人さんに冷たい視線を送る。
するとちらりと視線だけでこちらを確認したあと、再び俯いて手のひらで顔を覆った。
「合コンでイケメン紳士に食われる寸前だったの?」
「…大丈夫、断ろうと思ってたから」
まぁ。ちょっと流されてみるのもアリだとは思ってたけど。
「あとさ」
「まだあるの?」
「朱音が『Dの男』を求めてた意味がやっとわかった…」
項垂れたまま零れ出た嫉妬と独占欲に塗れた呟きに、私は思わずクスっと笑ってしまった。