その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~
「処女がよかった?」
「そうじゃないけど。だって、他に朱音を抱いた男がいると思うと…」
「私よりマシでしょ。同じ女は抱かないって、一体何千人いるのよ」
「そんないるわけないだろ!…ってか、え?朱音は?元カレって何人いるの?」
「…そんなこと知りたい?」
「知りたくはない。でも朱音のことで知らないことがあるのも嫌だ」
知りたいけど知りたくない。
以前私も遊人さんの居もしない彼女について考えていた時、そんな風に感じたのを思い出した。
「今夜は、たくさん話したい。遊人さんのこと知りたいし、私のことも知ってほしい。苦しいほど嫉妬すると思うし、嫉妬させることもあるかもしれないけど…」
「うん。そうだね、たくさん話そうか」
「あ、でもそしたら…」
泊まるのならそれなりの準備がいる。
メイクも落としたいし、出来れば替えの下着も欲しい。
「コンビニ行く?」
「え?」
「クレンジングとか化粧水もいるでしょ?着替えたいだろうし」
私が言い出すより先に、気を利かせてくれた遊人さんが提案してくれる。
しかし私はこの発言をありがたく好意的に受け取れるほど器は大きくない。
急にぶすっとしだした私に戸惑った遊人さんが「どうした?」と優しく聞いてくれるけど、自分でも面倒くさいと思うこの感情をどこまで曝け出していいのかわからない。
「大丈夫。言って?」
私の葛藤はお見通しなのか、またぎゅっと抱きしめてくれる。