その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~

友藤さんと付き合うと決心した8ヶ月後。

私は北海道にいた。
旅行ではなく、この土地に住んでいるのだ。

健康推進会の北海道西支部に異動願を出し、それが受理されて2ヶ月前からこの北の大地で出張健診に携わっている。

なぜそんなことになったのか。
理由は私が彼に別れを切り出したからだった。


『ごめんなさい、やっぱり別れてください』


夏の終りに付き合い始め、冬が来る前には限界が来た。我ながら堪え性がないと笑うことも出来ない。

それまでも小さないざこざは何度もあった。
キスが慣れすぎてて嫌だと泣き、セックスも上手すぎて経験の多さを物語っていて嫉妬で辛くなり、スムーズに出来るようになるのに2週間はかかった。

それでも彼は根気よく私の嫉妬心に向き合ってくれて『俺には朱音だけだ』と何度も愛情を伝えてくれた。その度に絆を強くして、だからこそ私は彼を信じて3ヶ月は耐えたのだ。

しかし私に別れを決意させた決定的な出来事は、職場にいる彼の過去の女性たちの現在の動向だった。

彼女たちは彼の変貌ぶりに驚きつつ、私が落とせたのなら自分もいけると猛アプローチを掛けだしたのだ。

< 105 / 110 >

この作品をシェア

pagetop