その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~
友藤さんと付き合うと決心した8ヶ月後。
私は北海道にいた。
旅行ではなく、この土地に住んでいるのだ。
健康推進会の北海道西支部に異動願を出し、それが受理されて2ヶ月前からこの北の大地で出張健診に携わっている。
なぜそんなことになったのか。
理由は私が彼に別れを切り出したからだった。
『ごめんなさい、やっぱり別れてください』
夏の終りに付き合い始め、冬が来る前には限界が来た。我ながら堪え性がないと笑うことも出来ない。
それまでも小さないざこざは何度もあった。
キスが慣れすぎてて嫌だと泣き、セックスも上手すぎて経験の多さを物語っていて嫉妬で辛くなり、スムーズに出来るようになるのに2週間はかかった。
それでも彼は根気よく私の嫉妬心に向き合ってくれて『俺には朱音だけだ』と何度も愛情を伝えてくれた。その度に絆を強くして、だからこそ私は彼を信じて3ヶ月は耐えたのだ。
しかし私に別れを決意させた決定的な出来事は、職場にいる彼の過去の女性たちの現在の動向だった。
彼女たちは彼の変貌ぶりに驚きつつ、私が落とせたのなら自分もいけると猛アプローチを掛けだしたのだ。